交通事故における過失割合と治療費
1 交通事故における過失割合
過失割合とは、交通事故が発生したときに、その交通事故の発生について当事者にどの程度の責任(過失)があるのかを意味します。
被害者側にも一定の過失割合がある場合は、法律上「被害者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して損害額を定めることができる」(民法722条2項)と定められており、過失を考慮して被害者の損害額が減額されます。
これは、交通事故により発生した損害について、当事者間で公平に分担することが相当であると考えられているためです。
2 治療費と過失割合
交通事故で通院する場合、治療費全てを加害者側の任意保険会社が病院へ直接支払うため、被害者は病院で治療費を支払わなくて良いことが多いです。
このような被害者が病院で治療費を支払ってない場合に被害者が本来負担する過失分治療費の扱いがどのようなものになるのか、以下で見ていきましょう。
⑴ 自賠責基準
自賠責保険は交通事故被害者を最低限保護するために加入が強制されている保険のため、被害者側に多少過失があったとしても自賠責保険の120万円の範囲内では基準に従い被害者に全く過失がない場合と同様の保険金が支払われます。
そのため、自賠責保険の範囲内では、治療費の金額によって支払われる賠償金の額に差は生じません。
⑵ 裁判基準
慰謝料等の基準は、自賠責基準より裁判基準の方が高いですが、その分、被害者側にも過失がある場合は過失相殺がなされます。
そのため、発生している治療費の金額によって支払われる賠償金額に差が生じます。
⑶ 具体例
以下では、具体的に治療費と過失割合の関係を見ていきましょう。
ア 治療期間5か月、通院回数40日、治療費40万円、過失2割とのケース(軽度の神経症状)では、
➀ 自賠責基準では慰謝料は34万4000円となります。
治療費40万円と慰謝料の合計は120万円以下のため、被害者は34万4000円の賠償を受けられます。
➁ 裁判基準では慰謝料は72万円(緑本)となります。
ただし、治療費と慰謝料の合計の2割である22万4000円が差し引かれるため、被害者は49万6000円(72万円-22万4000円)の賠償を受けられます。
イ 治療期間5か月、通院回数40日、治療費10万円、過失2割とのケース(軽度の神経症状)では、
➀ 自賠責基準では慰謝料は34万4000円となります。
治療費10万円と慰謝料の合計は120万円以下のため、被害者は34万4000円の賠償を受けられます。
➁ 裁判基準では慰謝料は72万円(緑本)となります。
ただし、治療費と慰謝料の合計の2割である16万4000円が差し引かれるため、被害者は55万6000円(72万円-16万4000円)の賠償を受けられます。
3 過失がある場合は治療費と賠償額のバランスが重要
上記のとおり、裁判基準に基づく場合は、発生した治療費のうち被害者側の過失分は賠償金から差し引かれることになります。
そのため、治療が長期にわたる場合で被害者側にも過失がある場合は、治療費を抑制するために社会保険を利用しておいた方がよいケースがあるため注意が昼用です。
交通事故でご不安な方は弁護士法人心 大阪法律事務所までご相談ください。